UNCE UPON A TIME IN TAIMA

映画をネタ的切り口で適当に書くブログ。更新滞り気味。

『カランコエの花』LGBTへ対する周囲の戸惑い

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新年、私の劇場映画始めとなったのはカランコエの花』去年からずっと観たかった作品だったが私事で都合がつかずに年を越しての鑑賞となってしまった。やっと観に行けた1月4日が奇しくも県内での上映最終日。いやあ間に合って良かった。これまで“LGBT”を描いた作品だとその当事者が主軸となって描かれてきたが本作ではその周囲の人間が主軸に描かれている。

高校2年生のクラス。とある日に保険医が突如始めた「LGBTについて」の授業。それをきっかけに生徒の間で「クラス内にLGBTがいるのでは?」という疑念が渦巻いていく。

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LGBTへ対する周囲の戸惑いが本作のテーマだ。自分もLGBTへ対して偏見や差別の意識は持たないと頭では思っているものの実際にそのような知り合いがいる訳ではないので目の当たりにした場合にどういう反応をすべきか、そして出来るのか分からない。

例えば知り合いがそれを告白してくれたとして、それを真剣に受け止めるべきなのか、笑って軽く受け止めるべきなのか。どう応えることが正しいのかと戸惑い、そして考えるはずだ。

相手を傷つけないように……まるで腫れ物に触るかのような態度になってしまうと思う。決して自分の中に悪意はないと思いながらもそれをどう相手に伝えるかは難しい。机上の空論だけでは語れない問題だ。

LGBTという話だけに限らず人と人とのコミュニケーションにおいては必ず誤解や齟齬が生まれるものだ。

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本作では思春期の移ろいやすい若者たちのそうした戸惑いを丹念に描写していく。教室という狭い世界。友情や恋愛などの人間関係、それぞれの想いが騒動に直結し交錯していく。彼らの言葉や表情ひとつに至るまで寸分足りとも見逃せず39分という短編ながら実に濃密な映画体感が出来る。

 

この物語の終幕を見届けた後、自分はまたすぐにでも頭からこの映画をもう一度観たい!と強く思った。それぞれの人物の想いや立ち位置がハッキリした2回目以降は違った視点で物語が見えるはずだからだ。しかし惜しむらくは自分が観に行ったのが県内上映最終日であったこと。去年のうちに鑑賞できていればもう一度鑑賞していたと思う。反芻するようにこの作品を楽しむのはDVDが発売されるその時まで待ちたいと思う。

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そしてこの映画の終幕といえばもうひとつ。エンドロールにある演出が仕掛けられている。近年観た映画でも最も印象に残ったエンドロールになった。詳細に言及しようとするとどうしてもネタバレになってしまうからこれ以上は話せないがこの作品のテーマを最も体現した部分であると思う。

 

とにかく観て色々と考えさせられることの多い作品だ。何においても分かりやすい答えや正しさばかりを求める今の時代だからこそ観て考えて想いを馳せて欲しい作品だ。